「ネイチャーポジティブ きほんの『き』を知ろう!」研修報告
研修会開催の経緯
ネイチャーポジティブ、30by30、自然共生サイト、OECMなど、生物多様性保全をめぐる国内外の動きが活発化しています。ひろしま自然学校では、これらの動きを今後の活動に役立てる目的で、2024年3月4日に標記の研修会を開催しました。
研修会の講師は静岡県のNPO法人ホールアース自然学校の松尾章史さん。全国の一線でご活躍する講師を広島にお招きする貴重な機会でしたので、広島県内の関係者へ広報し参加者を募集した所、申し込み開始から1週間程度で定員の20名に達し、世の中の関心の高さを実感しました。
研修会のようす
松尾さんによる基調講演では、生物多様性保全に関する最新情報の整理、環境省が進める自然共生サイトの登録状況、国内の取組み事例などについてお話いただきました。現状の自然共生サイトは大企業や行政の登録が多く、NPOなどが里山を活用して地道に進めてきた保全活動の登録がまだ少ない現状が分かりました。松尾さんは、「2010年に愛知で開催されたCOP10では、生物多様性保全のキーワードとして『SATOYAMAイニシャティブ』が提唱されています。人の暮らしで活用している身近な里山が健全に保たれることが実は生物多様性保全にもつながっている。そのことを踏まえた取り組みが今後求められる。」と強調されました。そのお話から、当団体が担ってきた「ろうきん森の学校」の20年に及ぶ活動は、まさにネイチャーポジティブの実現であり、今後も社会に求められる活動だと確信することができました。
自然共生サイトへの登録に際して、地域の自然の価値を見直したり、自然の恵みを享受しているさまざまな主体と連携・協働して保全計画を考えたりすることで、地域全体で生物多様性を保全する動きをつくる契機になる理想的な取組事例のお話も聞けました。また、具体的なモニタリング方法やそれを自然学校が市民参加で行う事例についてもお聞きしました。その後の質疑応答では、参加者それぞれの関心あるポイントでの疑問に対して、理解を深めることができました。
研修後半のディスカッションでは、「登録のメリット・デメリット」「観光資源など経済活動につなげたい(ツーリズム造成など)」「教育・研修への活用の可能性」「モニタリングってどうするの?」という4つのテーマに分かれ、「えんたくん」にメモを取りながらディスカッションしました。話し合いの中からさまざまなアイディアが生まれ、ネイチャーポジティブの可能性を共有できました。今後も継続的に勉強会などを開いて、具体的なプロジェクトを描き出したいと考えています。
今後の展開
ひろしま自然学校では、速やかに自然共生サイトの登録を申請し、広島県で初めての里山での登録をめざします。それに伴い、20年目を迎える里山保全活動を見直し、新たな10年に向けてサステイナブルな展開を創出したいと考えています。新たな里山保全の担い手を養成する連続講座や、生物多様性が保全された里山を最大限活用できる学習機会の創出、地域の里山保全に取り組む団体と連携した勉強会の開催、これらの活動が伝わる情報発信と参画する市民や企業への広報などです。
生きものあふれる里山を守って、その恵みで人生を豊かにする活動に、あなたも参加してみませんか!
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