2023年度

2023年は、生物多様性、ネイチャーポジティブ、自然共生サイトについて学んだ1年でした。2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年グローバルターゲットの1つに盛り込まれました。それを踏まえ、日本は2030年までのネイチャーポジティブ実現に向け30by30を目標の一つとして位置づけています。30by30とは、2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。30by30の目標達成のためには、国の取組を推進することに加え、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を広げていくことも重要です。ひろしま自然学校も20年の活動実績と生き物調査のデータを基に「自然共生サイト」に申請し、認定していただきました。

年間活動利用者数

森を育む 人を育む 森で遊ぶ その他 合計
参加者数 41人 608人 2,119人 0人 2,768人
​従事者数 507人 138人 749人 0人 1,394人
合計 548人 746人 2,868人 0人 4,162人

生き物調査を継続的に実施しています

「森を育む」活動では、里山の保全やフィールドの整備活動を行っています。里山整備を行っていくと、森の生き物も変わってきます。里山の生き物は、人の手が入ることで生息しやすい環境となります。中山間地の少子高齢化、暮らしの変化により、現在では里山の保全が難しくなっています。私たちは、里山環境の保全とともにそこに住む生き物についても考えています。環境省モニタリングサイト1000里地調査の手法を使って、植物相、中・大型哺乳類、鳥類、カエル類、チョウ類などの調査を年間通じて行っています。

1 基礎インフラの整備実績

昨年報告したツリークライミングをしていた木(コナラ)は、形を変えて素敵なベンチになりました。伐採した木材は、フィールドの整備にも利用しています。机やベンチ、森の道の木橋や階段など様々な形になっています。

 
2 散策路の整備実績

現在、散策路は全長4km程あります。散策路の草刈りや橋・階段の補修などを行いました。

3 森林の整備実績

マツ枯れ、ナラ枯れの影響で、アカマツ、コナラなどが順々に枯れてきています。木曜日の平日作業隊が中心に伐採作業を行っています。
里山の環境を保持していくためには下草刈りもかかせません。地域の方、ボランティアの方、様々な方に関わっていただき、定期的に行っています。毎年6月末には地域の方20人程度来てくださり、一斉草刈りの日を設けています。その日は、地域の方以外にもNPOの会員のみなさまはもちろん、毎年コベルコ建機労働組合のみなさまも来てくださっています。草刈り機で入れない階段や中腹の小道を手刈りで行ってくださっています。このようにたくさんの方のご支援で里山の整備ができています。

​4 動植物調査実績

里山モニタリング1000の調査とセンサーカメラによる調査を行っています。毎年冬には、万代池にマガモやコガモなど冬鳥がやってきます。


SDGsユースラボ

次世代を担う10代〜30代の若手を対象に、3つの切り口(テーマ)でSDGsローカルSDGsの視点を取り入れた社会課題解決の道筋を考え、森の学校における今後のSDGs展開の具体的可能性を探るSDGsユースラボを開催しました。
〈3つのテーマ〉
「教育のオルタナティブ」「住民のエンパワメント」「里山保全&関係人口の創出」

県内外5大学から9名、社会人3名、合計12名が参加し、半年間かけて研修を積み重ねました。全員で集まる講座は4回でしたが、それぞれのチームで議論をしたり、提案をまとめる時間も持ちながらの活動となりました。参加者は積極的にコミットし「SDGsの基礎、森の学校の活動とSDGsの関連などについて理解する」「教育、地域づくり、環境保全の3つの領域から社会課題解決について考える」「SDGs、ローカルSDGsの達成のための方策を提案する」の目的をしっかりと達成し、学びの深まる時間となりました。

その他にも「人を育む」活動では、環境教育のプログラムを行うトレーナーの育成や、企業の労働組合の新入組合員のチームづくり、環境学習を行う人材の養成等を行いました。延べ608人の方にご参加いただきました。

1 人材育成の実績

【主な人材育成の実績】
■SDGsユースラボ ■環境学習リーダー ■ユースボランティア
■森のようちえん運営ボランティア ■コミュニティ・ワーカー

■SDGsユースラボ

■環境学習リーダー
地球教育プログラム「アースキーパー」の指導者養成に継続して取り組んでいます。また今年は書籍『EARTHKEEPERS』の輪読会を定期的に行い、地球教育やアースキーパーズ・プログラムへの理解をより深めました。その他にも、受託などにより環境学習リーダーの養成に取り組みました。

■ユースボランティア
大学生のボランティアグループの養成。春先に2泊3日の集中トレーニングを行い、その後OJTなど年間を通して育成に取り組みました。

​■森のようちえん運営ボランティア
幼児教育を学ぶ大学生を中心に募集し、親子を対象としたイベント型森のようちえんを企画・運営する人材の育成に取り組みました。

​■コミュニティ・ワーカー
持続可能な地域づくりのための地域コーディネーションスキルの向上を目指して、継続的に実施しています。毎年様々なテーマで実施していますが、今年は「基礎から学ぶファシリテーション」ということで土台となる部分を改めて学ぶ機会を設けました。

フリースクールを毎週火曜日に開校しています!

小学1年生〜6年生を対象に、森のフリースクールを週に1回開校しています。子どもたちにとって「自分らしくある」ことを大切にした新たな居場所と学びの場。自然の中で自由に過ごし、自分の感情や興味を見つめながら、仲間と共に成長できる環境を整えることで、子どもたちが未来に向かって自身を持って歩む力を育みます。「やりたい」「話したい」「考えたい」子どもたちの気持ちを大切にしながら森の自然と地域のコミュニティの中で自分らしく過ごせる場を創っていきます。

その他にも「森で遊ぶ」の活動として、小学3年生から中学生を対象とした夏休みの長期キャンプ“里山フリーキャンプ”や幼児を持つ親子を対象とした日帰り森のようちえん“森の妖精くらぶ”、食をテーマにした“きたひろパン研究会”や“きたひろごはん”等、多様な世代の方を対象にしたプログラムを実施できました。また今年は豊平地域づくりセンターや地域の方と協働したイベントも多く実施できました。延べ2,119人の方にご参加いただきました。

1 プログラム開発・実践の実績
【主なプログラムの実績】
■森のフリースクール ■森の妖精くらぶ ■里山フリーキャンプ ■アースキッズ・プロジェクト
■ファミリーキャンプ ■きたひろパン研究会 ■きたひろごはん ■森カフェ ■大人の自然学校       ■デジファブ木工塾 ■森の学校フェスティバル ■地元との連携事業 ■企業研修・イベント

■森のフリースクール

■森の妖精くらぶ
広島文教大学と広島女学院大学と協働して、3〜5歳の未就学児童と保護者を対象に森のようちえんを開催しました。子どもたちが森で感性豊かに遊べる自然遊びを幼児教育を学ぶ学生と考えて実施。幼児親子の体験の場になっているのはもちろん、学生の経験の場、学びの場ともなっています。


■里山フリーキャンプ
小学3年生〜中学3年生を対象にした14泊15日の子どもキャンプ。子どもたちの「やりたい」をベースにキャンプを創り上げていきます。


■アースキッズ・プロジェクト
アメリカで開発された地球教育プログラムの1つで、10歳、11歳を対象に3ヶ月かけて地球のしくみについて学びます。日本ではひろしま自然学校でしか実施されていない貴重なプログラムです。今年は、豊平小学校の5年生に実施しました。


​■ファミリーキャンプ
家族と森の1日を楽しむファミリーキャンプ。森のお散歩や生き物さがしに出かけたり、ハンモックでゆっくり過ごしたり、BBQを楽しんだり、家族での時間を深めます。

■きたひろパン研究会
小麦プロジェクトと並行して行っています。自分たちで小麦の植え付け、麦踏み、収穫、脱穀を行い、月1回程度パン研究会で石窯ピザ・パンの加工に挑戦しています。季節にあった食材を用い、試行錯誤しながら行っています。


■きたひろごはん
北広島の食材を使って料理を楽しみながら、食を通して自分・地域・地球の環境を考える会を実施。広島市内から料理人をゲストにお迎えして実施しました。

■森カフェ
春の芽吹きの時期、里山のめぐみを堪能する会を実施しました。渓流魚の女王アマゴの包み焼き、山菜をとってきて天ぷらやおひたし、ご飯は羽釜で炊きます。今年は雨模様だったので、雨合羽を着て山菜採りに出かけました。

■大人の自然学校
大人が自然を楽しんだり、リフレッシュしたり、自分を整理したり、新たなことを学ぶような場も創っています。今年は「醤油搾り体験会」「生物多様性と自然共生サイト研修」「フリースクール映画上映」を行いました。

■デジファブ木工塾
レーザーカッターや3Dプリンターなど「デジタルファブリケーション」を活用し、様々な体験を実施しました。スツールづくり、木杓子づくり、ランプシェードづくり、ワラーチづくりなど。

■ろうきん森の学校フェスティバル
年に1度のフェスティバル。スタッフも合わせると300人程人が集まります。カヌーやピザづくり、藍染体験、アースウォーク、木工クラフト、丸太切り競争、絵手紙教室などなど、里山の体験を楽しめる様々なコーナーを設置しています。 今年はスタンプラリーを設置して、より色んなコーナーを楽しんでいただく工夫もありました。

■地域との連携
地元自治会等と連携し、フィールドの一斉草刈り活動を実施。今年度は、地域づくりセンターと共催で地域の人が先生・生徒になって行う「森の学校ごっこ」に加えて、地域の学校も月1回程度実施しました。

■企業研修・イベント
企業の労働組合による新入組合員研修や里山保全ボランティアの受け入れを実施。また、会員とその家族を対象とした森を楽しむイベントを実施。